IKEv2は、デバイスとVPNサーバー間のセキュアな接続を確立するためIPsec(インターネットプロトコルセキュリティ)暗号化を使用するVPN(仮想プライベートネットワーク)プロトコルです。安定性に優れ、主要オペレーティングシステムのビルトインサポートで知られるIKEv2は、特にネットワークを頻繁に切り替えるモバイルデバイスにおける信頼性の高い接続の維持に優れています。
IKEv2の仕組み、用途、設定方法について紹介します。
免責事項: SurfsharkはWindowsにおけるIKEv2プロトコルをサポートしていません。
IKEv2 の仕組み
IKEv2(Internet Key Exchange version 2)は、インターネット上でデータが通過する安全なプライベートトンネルを構築する上で役立つVPNプロトコルです。IKEv2プロセスを段階的に説明します。
1. ハンドシェイクと認証
IKEv2を使用してVPNに接続しようとすると、デバイスとVPNサーバーがハンドシェイクを実行します。ハンドシェイクとは、双方がデジタル証明書、ユーザー名とパスワード、事前共有鍵などを使用して相互のアイデンティティを確認する情報交換を指します。
このステップは、二人が身分証明書を見せあって身元を確認する行為と同様です。これにより、トンネルが作成される前に双方の間に信頼が確立されます。
2. 鍵交換
次の段階では、IKEv2が双方による暗号化方式の合意とセキュアなコードの生成をサポートします。このコードは、技術的には暗号鍵と呼ばれ、VPNトンネルを通過するすべてのデータを暗号化および復号化し、盗み見に対する対策となるため、極めて重要です。
これらの鍵を使うことは、お客様と友人が2人以外には理解できない独自の言葉で会話することに合意するようなものです。誰かが盗み聞きしても、会話の内容を理解することはできません。
3.セキュアトンネルの構築
認証が完了し、暗号化方式が設定されると、IKEv2はIPsec暗号化によってトンネルを確立します。このトンネルは、公衆インターネットを通るプライベートな経路のようなものです。それによって、送受信されるデータを第三者が読み取ったり改ざんしたりできなくなります。
デバイスとVPNサーバーの間に、他のトラフィックが一切許可されない専用のセキュアな高速道路があるようなものです。送信されるもの(ウェブサイトへのアクセスの要求、メッセージ、ファイルなど)はすべて、このトンネルを通るため盗み見を防止できます。
4. 接続の維持
IKEv2は、接続状況の変化に対する対応の安定性で知られています。Wi-Fiからモバイルデータへ切り替える必要がある場合など、インターネット接続が予期せずに切断された場合であっても、IKEv2は手動で再接続しなくても、セキュアなトンネルを迅速に再確立できます。
これらの状況ではWireGuardなどのVPNプロトコルが依然として優れたパフォーマンスを発揮しますが、この機能によりIKEv2は特にモバイルデバイスで人気があります。
IKEv2 VPNの長所と短所
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長所
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短所
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ビルトインプラットフォームサポート
IKEv2は、ほとんどの最新のオペレーティングシステム(Windows、macOS、iOS、Androidなど)にネイティブで統合されており、追加のソフトウェアインストールが不要です。 |
ファイアウォールの制限
IKEv2は、適切に設定されていない場合、制限が厳しい一部のネットワークでブロックされる可能性があり、検閲の厳しい環境ではアクセスが制限される場合があります。 |
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ネットワーク間の接続性
IKEv2のMOBIKE(Mobility and Multi-homing)機能は、信頼性の高い接続とともに迅速な再接続機能を実現します。これは、特にモバイルネットワーク間のローミング時やWi-Fiからセルラーデータへの切り替え時には効果的です。 |
複雑かつ高度な設定
基本的な設定は簡単ですが、高度な設定やトラブルシューティングは複雑になることがあり、機能を完全に引き出すには追加のソフトウェアが必要となることがよくあります。 |
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強力なセキュリティ
IKEv2は、IPsec暗号化標準に基づき、さまざまな暗号化アルゴリズム(AES-256など)をサポートし、堅牢なセキュリティを提供します。 |
速度の物足りなさ
IKEv2は高速ではあるものの、速度が重要なアプリケーションではWireGuardのパフォーマンスには及ばない場合があります。 |
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バッテリー効率
IKEv2は、効率的な設計により他のプロトコルと比較してバッテリー消費が少なく、VPN使用時のデバイスバッテリー寿命がより長くなります。 |
限定的なプラットフォームサポート
IKEv2は、最新のオペレーティングシステムのほとんどでサポートされていますが、特に一部のルーター、古いデバイス、ニッチなプラットフォームでは、他のプロトコルほど広く対応していない場合があります。 |
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安定したリアルタイム通信
IKEv2は、VPN経由の音声通話やビデオ会議など、安定した接続が必要な活動において信頼性できる選択肢です。 |
潜在的なセキュリティの脆弱性
更新を怠ると、IKEv2の実装は、特に認証が脆弱な場合や暗号化設定が古い場合に既知の脆弱性にさらされる可能性があります。 |
IKEv1とIKEv2の主な違い
IKEv1(Internet Key Exchange version 1)とIKEv2は、どちらもセキュアなVPNトンネルを確立してインターネット接続をより安全にすることができるプロトコルです。
両者の主な違いは何ですか?
IKEv2は、改良されたより新しいバージョンであり、明確な優位性がいくつかあります。
- より簡単になった設定:IKEv2はより合理化されたトンネリングプロトコルであり、IKEv1よりも高速かつシンプルです。
- より強固なセキュリティ:IKEv2はIKEv1で見つかった多くのセキュリティ上の欠点を修正し、より最新の暗号化アルゴリズムを使用することでより優れたデータ保護を提供します。
- より高い信頼性:IKEv1では、インターネット接続が中断された場合やネットワークを変更した場合にVPNを手動で再起動する必要があることがよくありました。一方、IKEv2は自動的に再接続するため、追加の操作不要でシームレスにセキュアトンネルを復元できることが多いです。
- より幅広いデバイスのサポート:IKEv1とIKEv2はどちらも多くのデバイスで動作しますが、IKEv2の方が総合的な信頼性により、モバイルデバイスを含む幅広いデバイスには特に適しています。
つまり、IKEv2の方が現代的、セキュア、かつ信頼性が高く、現在のVPN接続において人気の選択肢となっています。
3つの簡単なステップでIKEv2 VPNを設定する方法(Surfsharkユーザー向け)
ビルトインプラットフォームサポートにより、SurfsharkではIKEv2を簡単に設定できます。
- アプリをダウンロードします:公式アプリストアまたはVPNダウンロードページから、お使いのデバイスにSurfsharkアプリをインストールしてください。
- IKEv2プロトコルを選択します:設定 > VPN設定 > プロトコルに移動し、IKEv2を選択します。
- 希望のVPNサーバー拠点とconn3d5を選択します。
IKEv2を手動で設定する
手動設定では構成をより細かく管理でき、専用VPNアプリがないデバイスでも機能します。
Windows
WindowsデバイスにおけるIKEv2の人気の低下に伴い、SurfsharkはWindows向けIKEv2サポートを終了し、よりセキュアかつ効率的な他のプロトコルに注力することを決定しました。ただし、WindowsデバイスでIKEv2接続を設定する一般的な手順は以下の通りです。
- 設定 > ネットワークとインターネット > VPNを開きます。
- VPN を追加するをクリックし、Windows (ビルトイン)を選択します。
- VPNサーバーの詳細と認証情報を入力します。
- 接続設定を構成し、プロファイルを保存します。
- VPN設定パネルから接続します。
macOS
詳細については、macOS向けの詳細なIKEv2設定ガイドを参照してください。
- Surfsharkウェブアプリにログインし、IKEv2証明書ファイルをダウンロードします。
- プロンプトが表示されたら、キーチェーンアクセスのログインキーチェーンに証明書を追加し、常に信頼するに設定します。
- システム設定 > ネットワークを開きます。
- +ボタンをクリックし、VPN > IKEv2を選択します。
- サーバーアドレスと認証情報を入力します。
- 詳細オプションで認証設定を構成します。必要に応じて、認証方法として証明書を選択します。
- 適用をクリックし、ネットワーク設定から接続します。
Android(strongSwan経由)
詳細については、Android向けの詳細なIKEv2設定ガイドを参照してください。
- Surfsharkウェブアプリにログインし、デバイスにIKEv2証明書をダウンロードします。
- Google Play StoreからstrongSwan VPNクライアントをダウンロードします。
- strongSwanを開き、VPNプロファイルを追加をタップします。
- サーバーの詳細を入力し、求められたらダウンロードした証明書をインポートしてサーバー認証を行います。
- Surfsharkのユーザー名とパスワードを入力します。
- 接続をテストし、必要に応じて設定を調整します。
- プロファイルを保存し、strongSwanインターフェースから接続し、プロンプトが表示されたら証明書を信頼します。
iOS
詳細については、iOS向けの詳細なIKEv2設定ガイドを参照してください。
- Surfsharkウェブアプリにログインし、Surfshark IKEv2証明書をダウンロードします。直接ダウンロードできない場合、別のデバイスからAirDropで転送する必要があります。
- 証明書ファイルをタップし、デバイスプロファイルへのインストールを許可します(設定 > 一般 > プロファイル)。
- 設定 > 一般 > VPNとデバイス管理 > VPNを開きます。
- VPN設定を追加をタップし、IKEv2を選択します。
- サーバーの詳細と認証情報を入力します。証明書で、必要に応じてインストール済みのSurfshark証明書を選択します。
- 必要に応じて、常時接続のVPNなどの追加設定を構成します。
- 保存し、iOS VPN設定から接続します。
一般的なIKEv2 VPNの問題のトラブルシューティング
IKEv2は一般的に信頼性が高いですが、ネットワーク構成、ファイアウォール設定、認証の問題により接続の問題が発生する可能性があります。よくあるIKEv2 VPNの問題と対処方法は以下の通りです。
「接続中」または「セキュリティネゴシエーション中」で止すまる
これは通常、認証または構成の問題を示します。サーバーの詳細を確認して、証明書の有効性をチェックし、認証情報が正しいことを確認してください。別のサーバー拠点を試すか、VPNプロバイダーに問い合わせて更新された構成ファイルを入手してください。
接続後にインターネットに接続できない
多くの場合、この問題の原因はDNS設定の問題です。ネットワーク設定で、DNS(ドメインネームシステム)サーバー(Surfshark DNSサーバーの場合は 194.169.169.169 など)を手動で設定するか、競合が発生している場合はIPv6を無効にしてください。
証明書エラー
期限切れの証明書または無効な証明書では、接続が失敗します。VPNプロバイダーから新しい証明書をダウンロードし、システムの日付/時刻が正しいことを確認し、証明書のインストールを検証してください。
DNSまたはIPリークの問題
IKEv2 VPN接続が切断されると、DNSやIPアドレスなどの情報が漏洩し始める可能性があります。デバイスがVPN提供のDNSサーバーを使用するように設定し、サポートされていない場合はIPv6を無効にし、利用可能な場合はビルトインキルスイッチ機能を使用して切断時の漏洩を防止してください。
IKEv2の互換性:デバイス、ネットワーク、ファイアウォール
お使いのデバイスやネットワーク構成でIKEv2が動作するかおどうか分かりませんか?IKEv2が動作する環境と動作しない環境を簡単にまとめてみました。
IKEv2プラットフォームサポート
IKEv2は、以下のプラットフォームでサポートされています。
- macOS: OS X 10.11以降(ネイティブサポート)
- iOS:iOS 8以降(ビルトインサポート)
- Android:Android 4.0以降(strongSwan経由。新バージョンではネイティブサポート)
- Linux:strongSwan搭載のディストリビューション
- Windows:Windows 9以降(ビルトインサポート。ただし、Surfsharkでは利用不可)
ネットワークとファイアウォールについての注意点
IKEv2はほとんどのネットワークで動作し、ほとんどのハードウェアおよびソフトウェアと互換性があります。ただし、以下の点に注意が必要です。
- ルーターの互換性:多くの最新のルーターはIKEv2構成をサポートしており、ネットワーク全体のVPN保護を可能にします。サポートと設定オプションについては、ルーターのユーザーマニュアルまたはファームウェアの文書を確認してください。
- モバイルネットワーク:ほとんどの通信事業者はIKEv2インターネットトラフィックをサポートしていますが、VPN接続を制限またはスロットリングする場合があります。安定性は、ネットワーク品質やローミング契約などの要因により異なる場合があります。
- ファイアウォールとNATトラバーサル:IKEv2は、NAT(ネットワークアドレス変換)トラバーサルをサポートしているため、通常は家庭環境など他の人とインターネットを共有している場合でもスムーズに接続できます。そのため、IKEv2は通常、ほとんどのファイアウォールで良好に動作します。ただし、オフィスやセキュリティが厳しい場所では、ファイアウォールがIKEv2接続をブロックし、オンライン接続がより難しくなる可能性があります。
地域制限
IKEv2は、DPI(ディープパケットインスペクション)システムを使用するインターネット検閲当局によって比較的検出されやすくなっています。インターネット規制が厳格な地域では、政府のファイアウォールがトラフィックをブロックする可能性があるため、VPNプロトコルの信頼性が損なわれる場合があります。
IKEv2 と他の VPN プロトコルの比較
IKEv2と他のVPNプロトコルの比較の理解は、特定のニーズに最適な選択肢を選ぶ上で役立ちます。最新のプロトコルはすべて強固なセキュリティを提供していますが、優先事項やユースケースに応じてそれぞれに明確な利点があります。
IKEv2とOpenVPNの比較
ビルトインの利便性とモバイルの安定性を求めるならIKEv2を選択しましょう。
高度な機能と制限の多いネットワーク環境にはOpenVPNを選択しましょう。
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IKEv2
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OpenVPN
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設定
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ビルトインサポート、シンプルな構成
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追加ソフトウェアが必要、設定がより複雑
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パフォーマンス
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非常に高速かつ安定
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速度が良好で信頼性も高いがオーバーヘッドがより大きい
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カスタマイズ
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構成オプションが限定的
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広範なカスタマイズとプラグインサポート
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IKEv2とWireGuardの比較
ネイティブプラットフォーム統合を重視するならIKEv2を選択しましょう。
最高の性能と全体的なシンプルさを求めるならWireGuardを選択しましょう。
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IKEv2
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WireGuard
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パフォーマンス
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非常に高速かつ安定
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卓越した速度、低遅延
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プラットフォーム対応
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広範なサポート、ほとんどのデバイスと容易に統合可能
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一部のプラットフォームでは追加設定が必要ですが、ほとんどの最新のLinuxサーバーでビルトインサポートがあります
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カスタマイズ
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柔軟な設定を提供(特にモバイル接続向け)
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詳細オプションが抑えられたよりシンプルな設定
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IKEv2とL2TP/IPsecの比較
L2TP/IPsecは比較的古い廃止済みのプロトコルであり、IKEv2に対する実用面での優位性は皆無です。IKEv2なら同等の互換性を維持しつつ、より優れたパフォーマンス、セキュリティ、安定性を提供できます。
IKEv2とPPTPおよびSSTPの比較
PPTPとSSTPは、いずれも時代遅れのプロトコルであり、使用は避けるべきです。IKEv2は、これらのレガシーオプションよりも優れたセキュリティ、パフォーマンス、互換性を提供します。
重要なポイント:IKEv2 VPNを選ぶべきですか?
ビルトインプラットフォームサポートとモバイルの安定性を優先するユーザーにとって、IKEv2は依然として手堅い選択肢です。WireGuardは全般的に優れたパフォーマンスを提供しておおり、OpenVPNはより高い柔軟性を提供していますが、ネイティブ統合と信頼性を重視するシナリオでは、IKEv2が依然として卓越しています。
IKEv2、OpenVPN、WireGuardからどれを選択するべきか迷っていますか?SurfsharkなどのVPNクライアントなら、選択する必要はありません。SurfsharkではいつでもVPNプロトコルを選択できるため、どのプロトコルが最も安定性とセキュリティに優れた接続を提供しているかをテストできます。
よくあるご質問
IKEv2はゲームに適していますか?
はい。IKEv2はゲームに適した安定した接続を提供していますが、通常はWireGuardの方が低遅延です。IKEv2は、接続の信頼性が高いため、ほとんどのゲームシナリオで許容できるトンネリングプロトコルとなっています。
IKEv2 VPNは無料ですか?
IKEv2はプロトコルであり、VPNクライアントではありません。 プロトコル自体は無料で実装できますが、インターネットのプライバシーとセキュリティのためにIKEv2を使用するには、有料のVPNサブスクリプションが必要になる可能性が高いです。
iPhoneのIKEv2とはどのようなものですか?
IKEv2は、ビルトインプロトコルオプションとしてiPhone VPN設定に表示されます。これは、セキュアなVPN接続にInternet Key Exchange version 2プロトコルを使用していることを示します。
IKEv2はファイアウォールによってブロックされる可能性がありますか?
はい。特に制限が厳しいネットワーク環境では、ファイアウォールがIKEv2トラフィックをブロックする可能性があります。企業のファイアウォールや政府の検閲システムがIKEv2接続を妨げる場合があります。
IKEv2 VPNは安全に使用できますか?
はい。IPsec暗号化を備えたIKEv2は、ほとんどのユースケースで強固なセキュリティを提供できます。最新の暗号化標準を採用しており、適切に設定すればセキュアであると考えられます。
IKEv2はIPv6をサポートしていますか?
はい。IKEv2はIPv6接続をサポートしていますが、実装はオペレーティングシステムやVPNプロバイダーによって異なります。適切なファイアウォールルールを使用して正しく構成しなければ、一部の構成ではIPv6リークが発生する可能性があります。
